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結晶化遅延効果について

「ニグロシンを添加すると、どの様になるのか?」


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熱可塑性樹脂の中でも結晶性樹脂において、カーボンブラック、タルク、ガラス繊維などの添加材が結晶核になることは良く知られています。

この様に作用する物質は結晶核剤と呼ばれています。結晶核剤は、6,6-ナイロンが結晶核になるより先に、結晶核として存在していることから6,6-ナイロンのみのときより早く結晶成長が始まり、成長点である結晶核が多いことから樹脂が早く固まります。

これに対し、ニグロシンは逆の働きをします。その作用は結晶核の発生を遅らせ、その結果、結晶核の数を減らし、結晶の成長を遅くします。

これは、ニグロシンに特有な効果です。このときの樹脂の融点は、ニグロシンの添加に関わらず、概ね変化しません。

 

先のコラムの中で説明している「結晶化遅延効果の具体的な現象」で結晶核の数の減少と結晶の成長速度が遅くなる現象について解説しました。

l  ニグロシン添加量と結晶核の数

l  昇温及び降温DSC測定において、発熱開始温度が下がる

Ø  結晶核の発生の遅さに起因

l  発熱している時間が長くなる

Ø  成長速度が遅くなる

 

今回は、ニグロシンを添加したときの6,6-ナイロンの状態について、少し詳しく解説します。

 

ニグロシンを添加することにより、どの位まで固化点(結晶化温度)が下がるのでしょうか?

図1は、高濃度にニグロシンを添加した6,6-ナイロンをキャスト法によりフィルム化し、DSC(示差熱分析)にて測定した結果です。

固化点(結晶化温度)の最小値は、ニグロシン添加濃度が13%の時で、24.3℃の低下を示しました。

固化点が、最小値を示すのは、6,6-ナイロンとの相溶性が関係しており、逆にニグロシンが樹脂に溶け込まないと、結晶核剤として作用してしまい、ニグロシンを添加しても、樹脂の融点は、大きく変化しておりません。

図1 Nigrosine Base EXの添加濃度と結晶化温度との相関

 

このとき、6,6-ナイロンの結晶化エネルギーに変化はあるのでしょうか?

DSCで測定した際の結晶化エネルギーとニグロシンの濃度との相関を図2に示します。

破線は、実測値であり、実線は、添加したニグロシンを差し引いた6,6-ナイロンだけの量に換算した値です。

これを見ると、6,6-ナイロンのみの換算値にした結晶化エネルギーにほとんど差異が無いことから、溶融から固化する際の状態変化のエネルギーに差が無いと考えられ、6,6-ナイロンに対する結晶の量にも変化が無いことが分かります。

図2 Nigrosine Base EXの添加濃度と結晶化エネルギーの相関

  したがって、結晶化遅延効果は、ニグロシンが導く結晶化エネルギーに影響を及ぼさないことが分かりました。 

では、6,6-ナイロンの結晶構造に変化はあるのでしょうか?

X線回折で示します。結晶構造が変わると横軸のブラッグ角も変わるはずです。

 ブラッグの式; sinθ=nλ/2d (nは整数、λはX線の波長、dは結晶面の間隔、θは結晶面とX線が成す角度)

       図3 6,6-ナイロンに添加するニグロシンの量を変えた薄板のX線回析

図4 Nigrosine Base EXの添加量変化によるX線回折ピークのずれ

 

図3は、6,6-ナイロンに添加するニグロシンの量を変えた薄板のX線回析のグラフです。分り易い様に図4に、回折ピークの頂点のブラッグ角とニグロシンの濃度に関するグラフを示しました。

このグラフから、ブラッグ角がニグロシンの濃度によって、変化していないことが分かります。

したがって6,6-ナイロンの結晶構造にニグロシンは関与していないことが分かります。

つまり、結晶中にニグロシンが存在していないと言えます。

これは、先に示したDSCにおける融点が変わっていない事実と一致します。

それでは、ニグロシンはどこに存在しているのでしょうか?

 

結晶領域に存在しないということは、非晶領域(アモルファス)に存在していると考えられます。

(通常、6,6-ナイロンの射出成形物の結晶化度は、約3035%と言われています。)

           図5 Nigrosine Base EXの添加濃度変化における
                   動的粘弾性測定結果





そこで、ニグロシンが、非晶領域に存在し、影響を及ぼしているかについてDMA測定(粘弾性測定)により観測してみました。

この測定は、分子運動を見るものです。

,6-ナイロン鎖の一部が動き出すような局所的な分子運動と、主鎖の運動(いわゆるガラス転移点)が分かります。

  この結果をまとめた図5から、ニグロシン濃度が高くなると、分子が動き出す温度も高くなっています。

  したがって、6,6-ナイロンの非晶領域に存在するニグロシンが、6,6-ナイロン鎖の分子運動を抑制していることが明らかです。

  この結果は、ナイロンの非晶領域で起こっている現象であり、同じ非結晶となっている溶融時にも、ニグロシンがナイロン鎖の運動を抑制していることが明らかです。更に、「ナイロン鎖が、凝集して結晶に至るまで抑制をしている。」つまり、何らかの抑止力が働いていることが明らかとなりました。

 

ニグロシンは、6,6-ナイロンが結晶化する際、ナイロン鎖の凝集に対して何らかの抑制効果があり、結晶化速度を下げています。

また、結晶領域においては、ニグロシンを添加しない6,6-ナイロンと何ら変わりが無いことが分かりました。

 

元文献

Influence of the Nigrosine Dye on the Thermal Behavior of Polyamide 66(Journal of Applied Polymer Science,Vol.101,3270-3274(2006))



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