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        ~溶解するニグロシンのはなし~

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溶解するニグロシンのはなし

 

スピリット ブラックとニグロシン ベース

        前回のコラムで“ニグロシンのはなし”について記述した。ニグロシンと呼ばれる黒色油溶性染料は、カラーインデックス上で2つに分類されソルベント ブラック 5(C.I.Solvent Black 5)の分類は、スピリット ブラック もしくはスピリット ソルブル ニグロシンと呼ばれている。この名が示す通り、スピリット ブラックは、アルコール系溶媒へ溶解する染料という位置づけであり、色素分子は塩酸塩として存在する。対してソルベント ブラック 7( C.I.Solvent Black 7)は、一般的にスピリット ブラックを苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)などアルカリで処理されることにより得られる。その処理は、スピリット ブラックの対イオンである塩化物イオンを除くことにより色素の極性が変化し、ニグロシン ベース もしくは、オイル ソルブル ニグロシンと呼ばれトルエンなど非極性溶媒への溶解性が向上する。 つまり、同じアジン骨格をもつ“ニグロシン”は、塩酸塩の構造からフリーの二級アミンにすることにより極性溶媒から非極性溶媒への溶解性を大きく変化させる性状をもっている。

        また、“ニグロシン”と呼ばれる色素の混合物は、その混合物中の化合物が極性の変化において色調が変化する特性(ソルバトクロミズム)を有している。極性の高い溶媒中にニグロシンを溶解した場合 深色移動する。つまり、青みを増す事になる。

“溶ける”という現象

        染料と顔料との明確な違いが“溶ける”という機能である。”溶ける”とは何か? 溶けるという現象について解説してみる。

     色材を溶質とした場合 染料が液体(溶媒)の中に均一にまじって、液体(溶媒)と一体になる。この溶媒が、水の場合は、比較的簡単でありだれもがイメージ出来る。食塩を水に溶かすと水は無色透明である。この状態が溶けるという現象である。水に溶ける色材は、イオン性化合物もしくは極性のある非イオン性化合物に限られる。具体的には、酸性染料、塩基性染料、直接染料 並びに反応性染料は、スルホン基など親水基をもち水に溶ける色材となる。これらは、一般に知られる水溶性染料と呼ばれる。ニグロシン類の中では、スピリット ブラックをスルホン化した化合物として酸性染料に分類される C.I. Acid Black 2があげられる。 C.I. Acid Black 2は、ニグロシンのフェナジン骨格にスルホン基が導入されている。スルホン化度の違いにより親水性がかわり、水への溶解度がかわる。

        それでは、有機溶剤に溶けるとは、どのような現象であろうか。この場合の溶けるとは、溶質分子(有機溶剤可溶型染料)が、溶媒分子に取り囲まれて均一化するという状態を形成し溶液を作ることを意味する。しかしながら、有機溶剤可溶型ニグロシンは、アジン骨格(フェナジン)を有する多数の化合物の混合物(多成分体)であるため、類似する分子 (一般的には会合すると分子量が大きくなり溶解性が劣る) 集まって粉体自体はアモルファスであるため、それぞれ単一化合物分子の粉体(結晶構造を持つ化合物)よりも高い溶解性を示していると考えられる。また、熱可塑性樹脂など、プラスチック中にこれらの有機溶剤可溶型ニグロシンを添加した場合、融解(melting)し樹脂(つまり溶媒)に相溶することで、溶剤同様に溶解しているものと考えられる。その結果、透明性のある色相が得られる。

     このように、染料と呼ばれる化合物の一群は、それぞれ相溶する溶媒中において単一分子を容易に形成し、その溶媒に均一化するという機能がある。均一化するためには、その色材と溶媒の相溶性が重要である。

        スピリット ブラックは、極性溶媒であるアルコールへの溶解性が良いが塩化物イオンが存在するため用途によっては金属の面腐食など懸念点も多い。

        そこで、脱塩構造にしたニグロシン ベースと呼ばれる一群が存在する。オリヱント化学工業以外のニグロシン ベース(オイル ソルブル ニグロシン)は、脱塩(イオン結合を持たない構造)が不完全であり、製品のpHが高い。つまり塩酸塩であるスピリット ブラックの粒子表面を苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)などのアルカリで色素粒子の表面を洗っているに過ぎない。本来 ニグロシン化合物として塩化物イオンからイオン結合を介していない構造にしている訳ではないため、表面の濡れ性を変えている程度と考えられる。ニグロシン ベース EXは、燃焼分解法での全塩素含有量が600ppm以下の仕様を有しており、且つpHは、ほぼ中性域に達している。

 

ニグロシン染料の溶解という工程

        オリヱント化学工業のニグロシン ベース EXの平均粒径は、7-10ミクロン程度である。粒径は、溶解し易すさ(濡れ性)に影響するのは、ニグロシンでも同様である。一般的には、固体の粒径が小さくなると表面積が増加するため、溶媒と接触する機会が増え、その結果固体は溶解しやすくなりますが、溶媒との相溶性が合わない場合は逆効果になり、溶解不良や分散不良となる。

        前節で説明した通りニグロシン ベース EXは、イオンフリー化されており、非極性溶媒への相溶性が増している。ニグロシン ベースは、様々な分子量の化合物の混合物であり、トルエン、キシレンなど非極性溶媒への溶解性は二級アミンの塩構造がフリーの二級アミンに変わるために、ニグロシン分子の極性が変り溶解しやすい溶媒が変わることとなる。ニグロシン ベースをより効率的に溶解するためには、可溶化剤の存在が重要である。可溶化剤としては、脂肪族カルボン酸などのオレイン酸が一般的に用いられアルキル芳香族スルホン酸、酸性リン酸エステルなどのアニオン系界面活性剤も有効であることが報告されている。これらの有機酸は、溶液の組成内でニグロシン ベースの二級アミンを塩構造に修飾し、更に高分子色素粒子の表面への濡れ性を高めコロイドを形成させ外見上では均一分散させていると考えられる。ニグロシン ベースの溶解には、これらの有機酸を用いる事が多く、有機酸の選択により幅広い極性〜非極性領域の溶媒への溶解度を向上させる働きがある。

        これらのニグロシンの溶解において、溶解工程時の撹拌と温度も重要である。ニグロシンは、アジン骨格をもつ多成分体であるため、類似構造の分子同士が会合していると考えられる。そのため分子同士を剪断される撹拌が有効である。 また、溶解時の温度を上昇させると分子の振動は大きくなるためそれぞれ会合体の分子間力を低下させる流動性が増す。一方、ニグロシンを添加したグリコール系溶媒インクにおいて経時的に粘度が増加するとの傾向があることが報告されている。この性状は、ニグロシン分子同士の会合とその性状に関係があると考えてられるが、今後の課題でもある。

        ニグロシン ベースを溶解する上で、親和性(相溶性)の高い溶剤を、真溶媒として用いる事も重要である。ニグロシン ベースの相溶する溶媒としては、アミド系溶媒があげられる。

 

解決すべきニグロシンの課題と方向性

        ニグロシンの有機溶剤への溶解性は表1の通り。スピリット ブラックは、低級アルコールへの溶解性がある。また、ニグロシン ベースは、トルエン等 非極性溶媒への溶解性に優れている。

1 スピリット ブラックとニグロシン ベースの比較 (参考値)

 

スピリット ブラック

ニグロシン ベース

メタノール

6.0 wt%

0.35 wt%

MEK

1.5 wt%

1.5 wt%

トルエン

0.2 wt%

1.0 wt%

 

可溶型ニグロシン “SOLBON BLACK” の開発コンセプト

        オリヱント化学工業は、ニグロシン ベースの溶解性について満足していない。そこでニグロシンの開発を行う上で溶解して使用される用途の過去の問題や事例を確認した。溶解する用途は、主にインク、塗料などが一般的であり顧客は、ニグロシンを溶解するという工程において、不溶解物・異物の除去としての濾過工程が存在する。その濾過工程において、濾過工程に要する時間が超過し、また濾過残渣が発生する課題がある。また、最終製品(インクや塗料)の経時的な安定性が重要であるが、ニグロシン中の結晶性の析出物が発生する事があり品質問題となり、しばしば苦情となった事例も報告されている。

        そこで、オリヱント化学工業は、新たに溶解度を向上させる可溶型ニグロシンを開発する事となり、次の点について留意した。ニグロシンは、アジン系化合物であるアニリンとニトロベンゼンの縮合成分を含む多成分体であり、不溶成分の高分子成分を含む、そこで可溶型ニグロシンを構成する要素として、低縮合物(低分子着色成分)をより多く含む組成とすること。また、経時的に析出し易い結晶性を有する成分を効率的に除去すること。更にはニグロシン合成中の残存原料あるいは無色副生物成分の低減と無機成分の低減を行う。これを課題として可溶型ニグロシンとしてSOLBON BLACK(ソルボン ブラック)として開発している。

SOLBON BLACK AR-889(粉体品)

        新規開発品(2012年8月現在未上市品:試製品)であるSOLBON BLACK AR-889と従来品 ニグロシン ベース EXとの差異について明確にする必要性がある。そのため、非プロトン系極性溶媒への溶解度について評価した結果を表2にまとめた。ニグロシン ベース EXに対して溶解度の向上、溶解のし易さが向上している。

2 SOLBON BLACK AR-889の溶解度 (参考値)

溶剤名

.

沸点 ℃

SOLBON BLACK AR-889

DMF  N,N-Dimethylformamide

153

27.1 wt%

DMA  N.N-Dimethylacetamide

165

32.0 wt%

DMSO Dimethyl sulfoxide

189

32.3 wt%

Acetone

56.5

4.2 wt%

MEK Methylethylketone

79.5

4.9 wt%

Acetonitrile

82

0.53 wt%

THF Tetrahydrofuran

66

32.0 wt%

γ-Butyrolactone

204

19.1 wt%

NMP N-methyl-2-pyrrolidone

202

35.5 wt%

Ethylal

87

0.2 wt%

Methyl acetate

56.9

5.4 wt%

Ethyl acetate

77.1

8.7 wt%

Ethyl lactate

151-155

16.8 wt%

Methanol

64.7

0.43 wt%

Ethanol

78.4

0.5 wt%

PGME 1-methoxy 2-propanol

120

10.4 wt%

DAA Diacetone alcohol

166

15.2 wt%

Benzyl alcohol

205

33.9 wt%

Cyclopentane

49

0.6 wt%

Cyclohexane

80.74

trace

Cyclohexanone

155.65

15.2 wt%

Toluene

110.6

2.8 wt%

 

        SOLBON BLACK AR-889の色相について、ニグロシン ベース EX とEXBPと表3に比較した。AR-889は、明度は低くなるが、やや赤みの色相を示している。

3  色相比較 (参考値)

 

SOLBON BLACK AR-889

NIGROSINE BASE EXF

NIGROSINE BASE EXBPF

L値 (明度)

49.45

49.98

50.16

a値

7.61

5.29

5.11

b値

-5.58

-8.05

-7.54

測定条件) 展色媒体:アートポスト紙、 印刷方法:グラビア印刷

 

AR-889の溶液(液体品):試作品名 SOM-L-0516

        溶解工程の繁雑さを解消するために、AR-889を20%含み、可溶化剤として酸性リン酸エステルを含むPGME(1-methoxy 2-propanol)の溶液品を試作している。室温で6ヶ月以上の安定性を有している。溶液として展開することで様々な機能付与を行う事が出来る。

 

可溶型ニグロシンの目標

        AR-889の展開市場は、コンティニアス型インクジェットインキ(CIJ)の適用を目指している。

        工業化検討を実施しており、インクジェット用途以外の用途開発を切望している。


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